野獣は時に優しく牙を剥く
「澪。何を考えているの?
澪のことだから自分を責めて俺と別れたいって結論に達しそうだ。
それは認めないからね。
俺はどんなことがあっても澪の力になりたい。
だから離れるっていう選択肢はなしにして。」
先回りして言われて言葉に詰まる。
「でも……だって……。
私のせい。」
「もし澪のせいっていうのなら、俺のせいでもある。
俺の我儘で側にいて欲しいって言った。」
「違う!そうじゃない!」
「澪。」
包み込むように手を撫でる龍之介の優しさに涙がこぼれた。
「私、不幸の子なんです。
私がいるとみんなが不幸になってしまうんです。」
張り裂けるような胸の痛みを感じながら龍之介へ告白した。
このことは出来れば話したくなかった。
けれど、そういうわけにはいかない。
自分だけ幸せになろうとしたから、罰が当たったんだ。
「おじいちゃんは今日、入院だろう?
俺たちは一旦帰ろう。
どうする?双子と一緒に俺の家でもいいし、澪の家でもいい。
澪の家に帰るとしても俺も泊まらせてもらうからね?
絶対に澪と離れないから。」
龍之介の固い意思を感じて力なく頷いた。