野獣は時に優しく牙を剥く
龍之介の温もりが優しくて涙があふれて彼の服を濡らす。
そして途切れ途切れに続けた。
「両親は痣のことをお前のせいだ、いいえ、あなたのせいよってなすりつけ合うような言い争いをよくしていて、それを聞いて育ちました。」
「うん。」
龍之介は言葉少なに澪の話を聞いた。
「私はそれがつらくて中学へ上がるタイミングで祖父の家に逃げました。
そしたら夫婦仲が良くなったみたいで、少しして双子が生まれました。
嬉しかった反面、やっぱり自分はいてはいけない子だったんだって……。」
言葉を詰まらせて嗚咽を漏らすと、背中を優しく撫でてくれた。
その手に甘えるように彼にしがみついて泣いた。
「それでもしばらく幸せでした。
祖父母は私にとても優しくて。
自分のやりたいことも見つけて、夢に向かって頑張ろうって思えました。」
「うん。そうか。」
僅かに安堵したような龍之介の声を聞いて心苦しく思った。
けれど、全て言ってしまわなければ。
そう思って続きを口にする。
「けれどやっぱり私は疫病神なんです。」
「疫病神?」
「はい。私がいるとみんな不幸になる。」