野獣は時に優しく牙を剥く

 沈黙が降りて、少ししてから澪は息を深く吸って再び話し始めた。

「初めて自分でやりたいって声を上げました。
 初めて夢を見つけて、初めて自分からやりたいって。
 けれど、そのせいで、その辺りから家族がギクシャクしてしまって。」

 当時を思い出して、胸が潰されるように痛くなった。
 澪は吐き出すように全てを吐露した。

「高校2年のときに親は離婚しました。
 私は祖父の家から通わせてもらっていたので、その知らせを聞いたのは進路を決める直前でした。
 大学は諦めました。
 自分だけ幸せになろうとした罰だと思って祖父にだけ負担はかけられないって。」

 その頃に祖母が亡くなったこと、最近になって祖父が虫垂炎で倒れたこと。
 色々なことが重なったことも事実だけれど。

 一番は自分が不幸を呼び寄せる子だからだ。

 それらを詰まりながらも龍之介へ伝えた。
 そして最後に告げた。

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