野獣は時に優しく牙を剥く
「龍兄!!」
双子の元気な声に目を覚ますといつの間にか眠っていた澪の目の前で龍之介が双子に揉みくちゃにされていた。
「ハハッ。寝起きにこれはつらいなぁ。」
「こら。颯!浩!」
目くじらを立てる澪を見て、双子どころか龍之介も笑っている。
「久々に見たよ。お母さんな澪。」
「龍之介さんまで笑わないでください!」
声を荒らげる澪の姿を見て、双子は顔を見合わせた。
「龍之介さん、だって。」
「本当。
ずっと谷さんって呼んでたくせに。」
小さな変化にいち早く気づいた双子にからかわれて顔を真っ赤にさせる。
龍之介まで一緒になって澪をからかった。
「澪、可愛いね〜。」
「ねー。」
「そんなこと言う人たちには朝ごはんありませんから!」
双子と一緒に戯言を抜かす龍之介を一蹴して、キッチンへと逃げる。
どうしよう。
こんな時だっていうのに、幸せを感じてる。
そんなことを思って緩んでしまいそうな頬をたたいた。