野獣は時に優しく牙を剥く

 先に車へ乗って待っていた祖父に開口一番、驚くことを言われた。

「龍之介くんが一緒に住もうって。」

「え?」

 龍之介の方を見ると頷いてみせて、祖父が言っていることが事実だと分かった。

「一緒に住むって……だって。」

「不甲斐ないが、耄碌じじいじゃ。
 またこんなことがあったら迷惑をかけることになる。
 それなら龍之介くんの厚意に甘えるのもいいかもしれん。」

「だって、住むって……。」

「ボロ屋だが、相川の家に住んでくれるそうだ。
 そうすれば颯太と浩太も転校せずに済む。」

「それは……そうだけど。」

 龍之介は優しく微笑むと澪を真っ直ぐに見つめた。

「澪、結婚進めよう。
 まだ俺の祖父に挨拶へ行く最大の難関は残っているが、俺は澪と結婚したい。」

「龍之介さん……。」

 昨日の打ち明け話を聞いて、ボロ屋に泊まってみて、それでも側にいてくれると言うの?

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