野獣は時に優しく牙を剥く
澪は後から後から流れてくる涙を止められなかった。
自分だけじゃない。
祖父や双子もいるのに、それでも、それをも含めて側にいてくれると言う。
澪は龍之介の懐の深さを改めて感じて何度も頷いた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
涙で濡れる声を聞いて龍之介よりも双子や祖父の方が喜びの声を上げて、みんなで笑い合った。
こんなに幸せでいいのかな。
澪は背中にそっと手を当てた。
もしもこの痣が今の幸せに出会う為の印だったのなら、今までつらかったことも全て意味があったことのように思えてしまう。
全て彼に会う為の試練だったんじゃないかって。
そんな風に思えてしまうほど、彼と過ごすひと時は幸せに溢れていた。