野獣は時に優しく牙を剥く
3.大切な居場所
温かいぬくもりに体を丸める。
穏やかなぬくもりにゆっくりと目を開けた。
目の前には柔らかそうな毛並みがあって思わず触れてみる。
想像通り柔らかくて触り心地もいい。
その塊がもぞもぞと動いてドキリとした。
夢見心地でぬいぐるみのテディベアでも触っているつもりだったけれど、どうもそうではないらしい。
自分の置かれた状況を把握して絶句する。
ここは谷の自宅リビング。
目の前の柔らかな毛並みは谷の頭だったのだ。
「おはよ。気持ち良さそうに寝てたから僕も眠くなっちゃって。」
「す、すみません。
洗濯物を畳んでいたのに、いつの間にか……。」
至近距離の彼の顔は破壊力絶大で、どうにか彼との距離を取ろうとする。
しかし彼の呟きに固まってしまった。