野獣は時に優しく牙を剥く

「いいえ。いつか澪に会って欲しいと僕は思っています。」

 澪の母親は澪への行いを悔いていた。
 そして双子を手放してしまったことも。

 けれど、自分は子どもと暮らすことに向いていないのだと、目に涙を浮かべて話してくれた。

 誰しもが母親に向いているわけじゃないし、誰だって子育てに悩むこともあるだろうと思う。

 俺から見てもこの女性はいい母親ではなかったのだと思う。
 それでも、澪を産んでくれて、ありがとうと言いたかった。

「澪からみんなへの手紙があるので、そこは見ていってやってください。」

 そう言い残して、俺は彼女の前から立ち去った。

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