野獣は時に優しく牙を剥く

 しばらくして司会者が「新婦から皆様へお手紙を読みたいとの申し出がありました。今から新婦が一言ずつメッセージを読みますので、お聞きください」と、アナウンスした。

 歓談してきた人たちは澪に注目して、澪は照れたように頬をかくと介添人から受け取った便箋を開いた。

「今日は私たち新郎新婦の為にお集まりいただき誠にありがとうごさいます。
 一言ずつですが、皆様へ私から感謝の気持ちを述べたいと思います。」

 震える手で便箋を持つ澪が愛おしくて、体を抱き寄せると俺を見上げた澪が微笑んでからメッセージを読み上げ始めた。

「前園さん。
 思えばずいぶん前から龍之介さんとの関係に気付いていらっしゃって不安がる私へ声をかけてくださいました。
 前園さんと話す度に勇気付けられ、前向きな気持ちになれました。
 ありがとうごさいます。
 これからも龍之介さんをよろしくお願いします。」

 前園さんに向かって頭を下げる澪へ周りから拍手が巻き起こる。

< 226 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop