野獣は時に優しく牙を剥く

 幸せそうな笑みを浮かべる澪の手を取った。

「でも、ね。
 俺の我儘も聞いてくれる?
 新婚旅行中、もう一つ部屋を取ってあるんだ。」

「え?」

「もちろん双子が一緒に寝たいって言えば家族で過ごせばいいとは思っていたよ。
 でも……今日はこれから2人で過ごしても罰は当たらないんじゃないかな?」

 目を見開いた澪は部屋の隅にいるおじいちゃんへ視線を移す。
 おじいちゃんは呆れたような声を出した。

「何をじじに気を遣ってる。
 ハネムーンじゃて。
 少しくらい2人で過ごさなけりゃそっちのが罰が当たる。」

「お気遣いありがとうございます。
 おやすみなさい。おじいちゃん。」

「あ、あの、おやすみなさい。」

 澪も控えめに挨拶をして、俺たちは部屋を後にした。

< 230 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop