野獣は時に優しく牙を剥く

 だから俺はわざと耳元で囁いた。

「赤ちゃんは女の子の双子がいいんだってさ。」

「ふた……赤ちゃん!?」

「ご期待に添えられるかは分からないけど、そうなるためには存分に愛し合わなきゃね。」

「りゅ、龍之介さん……。」

 戸惑っている澪を捕まえて唇にキスを。
 たまにしか愛し合えないもどかしさが俺の理性を削っていく。

「まずいな……。
 獣に成り下がりそうだよ。」

 漏らした本音に荒れた息遣いの澪が濡れた瞳を向けて俺を煽る。

「龍……私も……。」

 本性を曝け出したら澪はきっと逃げ出すだろう。
 だからギリギリのラインを均衡を保って……。

「龍……お願い……。」

 澪の色香に酔わされて深く溺れていく。
 長い夜はまだ始まったばかりだ。


ーfin

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