野獣は時に優しく牙を剥く
「夜伽もしてくれるの?」
「よとぎ……。」
「夜のお相手。」
隣で座る谷に顔を覗き込まれて、思わず仰け反った。
澪の狼狽ぶりを見て谷は吹き出して笑っている。
「ハハッ。そんなんでよく愛人にしてくれって頼んだよね。」
おかしそうに大きく笑う今の姿はいつも通りの谷だ。
けれど、先ほど覗き込んだ時……。
口の端を上げていた様はとても冗談には思えなかった。
隠している野獣がすぐそこまで顔を出していたようなそんな恐怖を感じた。
「大丈夫だよ。お金で買えないものがあることくらい僕でも分かってる。
遅くなる。帰った方がいい。」