野獣は時に優しく牙を剥く
祖父は谷へ真剣な声色で話し始めた。
「澪はじじに迷惑をかけないように、なんでも自分でやってきた子でな。
辛くてもなんも言わん。
手前味噌じゃが、いい子なんじゃ。」
「はい。
それはもう、よく存じております。」
谷も真剣に祖父の話を聞いている。
澪は我慢出来なくて嗚咽を漏らした。
ごめん。おじいちゃん。ごめん。
本当にごめん。
感極まった祖父も掠れ声で谷へと訴えた。
「これからは龍之介くんが気にかけてやってな。」
「はい。もちろんです。」
心なしか谷の声も掠れている気がしたのは気のせいに決まっているし、もし本当に掠れていたのなら、主演男優賞ものだと心の中で皮肉った。
そんなことを思い描くと自然と涙はおさまっていった。