野獣は時に優しく牙を剥く
「昨日も思ったけど帰って来て、家に人がいるっていいものだね。」
美味しい美味しいと言いながら食べていた谷がふとそんなことを口にした。
その気持ちは分からないでもない。
家に帰ると必ずおじいちゃんがいて、何か辛いことがあってもおじいちゃんの優しい顔を見ると吹き飛ぶ気がした。
「今度は相川さん家でご馳走になりたいな。
その方がおじいちゃんも喜ぶんじゃないかな。」
谷の申し出に澪は体を固くした。
「私の……おじいちゃんをどうしたいんですか?」
これは昨晩から思っていること。
自分を助けてくれたのは、百歩譲って自分の会社の社員だからとか、似た境遇だからかもしれないとか、いくつか理由は思い浮かぶ。
けれど、そこに祖父まで巻き込む必要はなかったのではないだろうか。
澪の疑問は正しく伝なかったようで谷は首を傾げた。
「どうって。
別にとって喰おうとは思ってないけど?」
「そういうことではなくてですね!」