野獣は時に優しく牙を剥く
語尾を強めると谷は眉尻を下げて苦笑した。
「せっかく澪ちゃんと仲良くやっていけると思ったのになぁ。」
「ふざけないで真剣に話してください!」
澪の剣幕に両手を軽く上げて宥めるように動かした。
「分かったから、ちゃんと話すつもりでいたよ。
これからの為にもお互いの意見を擦り合わせなきゃね。」
誠意を持って話してくれる気があるのか、訝る視線を向けても「せっかくだからまずは夕食をいただこう?」と話を濁された。
相変わらず柔らかな表情で「美味しい」と感想を交えながら箸を運ぶ谷に澪も観念して食事に集中することにした。
食事を済ませるとリビングの方へ移動して澪はローテーブルの前にクッションを置いて座った。
ソファに座ろうとしていた谷もそれに倣って少し離れて腰をおろした。
座り心地の良さそうなソファに座ってくつろげるような気分ではなかった。
先に口を開いたのは谷だった。
その内容は想像していたものとはかけ離れており、意図がつかめなくて言葉を詰まらせた。