野獣は時に優しく牙を剥く

 そんなもの諦めるしかなかった。
 そう叫んでやりたい気持ちをグッと押し留めて答えた。

「夢は教師になることでした。」

「そう。その夢、叶えられるといいね。」

「はい。ありがとうございます。」

 澪の記憶が確かならば面接で話したのは以上で全部だ。
 今、思い起こせば質問をしてきた若い人は谷だったかもしれない。

 携帯がガラケーだから採用されたと思っていたのは記憶違いだったようだ。

 入社してから面談があると言われてそこで話したこととごちゃ混ぜになっていたみたいだ。
 その当時は採用されたことが不思議で入社してもしばらくは信じられない気持ちで記憶が曖昧なのだ。

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