野獣は時に優しく牙を剥く
「君が結婚する時の為にお金を貯めておいてくれるようなおじいちゃんだ。
家族の為に孫娘が犠牲になって体を売ってまでしてお金を稼ごうとしていたと知ったらどう思うか少しは考えた?」
「それは……。」
悲しむに決まってる。
だからって………。
「谷さんには分からないですよ。」
この一言は谷を傷つける言葉だと分かっていながらも口をついて出ていた。
やはり谷は寂しそうな顔をさせて静かに目を閉じてから訴えた。
「そう言ったらおしまいだよ。
僕は相川さんを助けたかった。
それはきっと君のおじいちゃんも同じ気持ちだ。」
それはもちろん有り難い。
それは身に染みて実感している。
未だ納得していない澪の心を読んだように谷は言葉を重ねた。
「それとも正直にお金に困っているから家政婦の仕事も始めたので帰りが遅くなりますって言えば良かったのかい?
本当は愛人になれれば手っ取り早かったんですけど、とでも?」