野獣は時に優しく牙を剥く
何度かの会議で既に方向性は意見が一致している。
若い人達に受け入れられたのだから、次のターゲット層は年配の人。
既に大まかなアウトラインは決まっているようで、後は画期的な機能を各々が考えてくる辺りまで来ているようだ。
年配の人と言われて思い浮かぶのはもちろん祖父だ。
しかし祖父が使うことを考えると……。
会議が終わっても澪は新しい構想について思いを巡らせていた。
森本と2人、なんとなく連れ立って職場へ戻ろうとしているところで声をかけられた。
「相川さん。」
澪にしてみたら急に声をかけられてドキリとした。
それも声をかけてきたのが谷だったのだから尚更だ。
一緒に歩いていた森本が「私、先に行ってるね」と、会議室を出て行ってしまった。
会社ではあまり関わりの少ない彼に呼び止められ、緊張の面持ちで彼が続ける言葉を待った。
谷の方もいつも一緒にいる前園の姿はなく、いつの間にか会議室で2人になっていた。