野獣は時に優しく牙を剥く
まどろんだぬくもりからゆっくりと目を覚ます。
柔らかな眼差しを感じて前を見ると見つめている瞳と目が合った。
「おはよう。」
非現実的な光景に体を固くする。
心地のいい目覚めから一転、夢ならもう一度きちんと目が覚めて!と願ってみてもこれが現実のようだった。
「そんなに怯えなくても危害は加えないよ。」
布団の中で肩を竦めた彼はベッドの中で身長差が縮まっていて、いつもより綺麗な顔立ちと距離が近い。
「あの、、。」
何から質問していいのか状況をつかめずにいる澪に谷は順を追って説明した。
「気持ち良さそうに寝てたから起こすのも忍びなくて。
おじいちゃんには心配かけないように連絡しておいたよ。
眠っているから泊まらせますって。」
「連絡って………。」
澪の驚きを受けて、それさえも説明する。
「前回会った時に何かあれば連絡しますって連絡先を交換しているんだ。
たまに電話をいただいていたんだよ?」
いつの間に連絡先を交換していたのかという驚きと、いつの間にそんなに仲良くなっていたのかという驚きが混ざって驚きを通り越して呆れてしまった。