野獣は時に優しく牙を剥く

「試しにやられてみた感想を聞かせていただけますか?
 忌憚ない意見を聞かせてもらえると助かります。」

 いくつかやっていた祖父を見ていても楽しそうに生き生きしていたことが分かる。
 いくつになっても体を動かすことは気持ちいいのだと再確認した気がした。

 幸せに健康的になる機会を全ての人に得てもらおうと懸命に働く会社の一員であることを誇らしく思った。

「久しぶりに体を動かすのもいいもんだ。
 じじには思いつかない体操やら運動が新鮮で、こりゃいいわい。」

 ご満悦な祖父に谷も口元を緩ませた。

「おじいちゃんの太鼓判をもらえて心強いです。
 データにする為に実際には何人もの被験者の方にお願いすると思います。」

「ただなぁ………。」

 祖父が渋ったような声を出したのを聞いて谷も顔から笑みを無くしていく。

「はい。どんな小さなことでも構いませんので言ってください。」

 和やかな雰囲気は消え、真剣な表情で谷はずいっと祖父へと近寄った。

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