野獣は時に優しく牙を剥く

「可愛いなんてあるものか。
 龍之介くんを谷さんだとは。
 龍さん、くらい言えなきゃダメだ。」

 龍さんの後に盛大なハートマークを付けた声を出す祖父に澪まで吹き出してしまった。
 谷もどうにも堪え切れないみたいでお腹を抱えて笑っている。

 祖父の突拍子のない冗談に、かなり大騒ぎをしていたようで思わぬ声がかけられた。

「おじいちゃーん!もういいでしょ?
 入るからね?」

 部屋の外から大きな声がして目を白黒させる間も無く客間の扉が開いた。

「だ、ダメだってば!!!」

 止めてみたところで手遅れだ。
 開かれた扉から元気に顔を出す。

「初めまして!」

「初め、まして。」

「わぁ。こんな大きい人、初めて見た〜!」

 鳩が豆鉄砲を食ったような谷がギギギッと音を立てそうな動きでこちらに顔を向けた。

「すみません。騒がしくて。
 だから隠していたんです。
 ……弟の颯太と浩太です。」

 観念して紹介すると谷は顔を綻ばせた。

「そうか。君達が澪の大切な人か。」

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