野獣は時に優しく牙を剥く
颯太と浩太は顔を見合わせた。
目をパチクリさせて両手を口元にあてるとフフフッと笑う。
2人は双子で双子ならではのシンクロを見せて驚くことを口にする。
「澪姉の大切な人ってお兄さんのことでしょ?」
「僕達、知ってるんだよ。
好き合ってるからケッコンするし、ケッコンするから、お泊りしたんでしょ?」
ねーっと楽しそうな双子にわなわなと開いた口が塞がらない。
「おじいちゃん?
颯太と浩太に何を吹き込んだの?」
颯太と浩太は小学一年生でまだそういう話は早いと思い、きちんと決まってから二人へ話すからと祖父には口止めしておいたのに。
そもそもが嘘であるのだから祖父まででどうにか食い止めたい思いがあったのも事実。
それが……。
「いやー。
じじは真実を伝えたまでじゃ。」
祖父はこれ見よがしに目をそらす。
「おじいちゃん!!」
澪が怒り心頭に声を荒げれば荒げるほど谷が笑うので、また怒っているのが馬鹿らしくなって祖父の悪事は有耶無耶になってしまった。