クラスメイトの告白。
「風杏のこと助けてくれたのに、お父さんは彼のどこが気に入らないの?」
お母さんが質問すると、お父さんは少し間をおいて言った。
「……感謝してるよ。それにほとんど話したこともないのに、気に入るとか気に入らないとかないけど……ただ……」
「ただ?」
「髪が長すぎじゃないか? 顔なんか前髪で半分以上隠れてて、どんな顔してるのかもわかりゃしない」
「気にするところ、そこ?」
お父さん……彼、ヅラなの……とは、言えない。
事情があって、ヅラとメガネで変装して顔を隠してるの。
本当はびっくりするくらい美少年なのに。
……なんて、言えない。
「見た目よりも中身が大事よ。ね、風杏」
「風杏、お母さんこう言ってるけど、俺、学生のときイケメンだったからな」
「自分でイケメンて言う人、めずらしいわよね~風杏」
お父さん、お母さん。
伊原くんは、心も見た目も、すごく素敵なひとだよ。
だけど、私の恋は叶わない。
彼には、大切な彼女がいるから。
叶わないとわかっているのに、
そばにいると、好きという想いが増えていく――。