クラスメイトの告白。
「音ちゃん……」
私は音ちゃんの隣に行き、涙を流す音ちゃんの背中をさする。
「先輩が引退して、私が吹奏楽部の部長になったことも気に入らなかったみたい。下駄箱や机の中、私のカバンや楽器のケース……どこかにいつも紙が入ってた。捨てても捨てても何度も何度も」
「その紙って……茉雛の制服のポケットに入ってた紙と同じようなことが書かれたものか?」
「そう。消えろ、うざい、死ね、とか……そういう言葉ばっかり」
ひどすぎる……。
「灰谷、いじめられてること誰かに相談しなかったのか?」
「……言えなかった。当時の担任だった黒河内先生にも、吹奏楽部の顧問にも、もちろん親にも……」
「2年のときの担任、黒河内か。あんなやつ……いや、あいつには言わなくてよかったけどさ、でも親とか吹奏楽部の顧問には相談してもよかったんじゃないか?」
「いま思えば、そうだったかもしれない。あとになって、冷静になれたら、そういう選択もあったかもって思える……でも、そのときは苦しくて、誰かに話す勇気もなくて、いじめもこの苦しみも永遠に続くような、そんな気がしてた」