クラスメイトの告白。
私は、ベランダに干してあるカツラをチラッと見る。
「学校で変装してるのは、どうしてなの?」
「……目立ちたくないから」
「あ、白石さんの事故のことを密かに調べるため?」
「……まぁ、そんなとこ」
たしかにこんな美少年が学校にいたら、校舎のどこにいても目立ってしまう。
教室にいたら、つねに人がまわりに集まりそうなタイプの男の子だ。
たしかに事故のことをこそこそ調べるのは難しそう……。
いや、でも……友達が多いほうが事故の話も聞きだしやすいんじゃ……?
あ、わかった。
白石さんのことを想って、変装しているんだ。
学校にこんな美少年がいたら、女子たちがほっとくわけない。
大切な彼女がいるから。
女子たちにモテモテになったら困るからだ。
それくらい本当にイケメンだもんね。
きっとそうにちがいない。
女子たちを寄せつけないために変装してるなんて、どこまでも彼女想いの彼氏……!!
「でもすごい演技力だよね。本当に別人だよ」
「キャラ設定ミスったけどな。変装後のキャラだと、話しかけても逃げられることが多くてさ。みんな完全に俺のこと気持ち悪がってるし」
「そんなことはないと思うけど……」
「暗いとか幽霊とか……」
「ボソボソってしゃべるからじゃない? いまみたいに普通の声で話せばいいのに」
「いまさらキャラ変えたら、おかしいだろ」
たしかに、びっくりする。
「それで調べるのに限界がきて、相棒が必要になったの?」
「さすが汐野! 話が早いな」
東京から田舎の高校に転校してきて、このアパートでひとり暮らし。
愛する彼女のために、事故の真相を調べようとしている。
目立たないように、変装までして違う自分を演じている。
まだ伊原くんのことは知らないことばかりだけど、秘密を打ち明けてくれた彼に協力してあげたいと思った。
それに、白石さんの制服のポケットに入っていた、いじめをうかがわせるような紙のことも気になる。