クラスメイトの告白。
「でも、なによりいちばんの理由は、汐野の人柄」
「私の……?」
「困ってる人がいたら、誰よりも早く気づいて助けようとするよな」
「え? そんなこと……」
「前に汐野が学校に遅刻してきたとき……俺さ、見かけたんだ。バス停まで知らないおばあさんの荷物持って一緒に歩いてた」
「おばあさん……? あー、あのときの!」
「遅刻した理由を先生に聞かれても、おばあさんのこと言わなかったよな」
「いや、遅刻は遅刻だし……」
「優しいよな」
「誰でも、そうするよ」
「自分が遅刻するってわかってても行動するやつって、少ないんじゃないかな」
「そうかなぁ?」
「うん。クラスで誰かが元気なさそうにしてたら、声かけに行くしさ。俺が誰に対しても話しかけんなオーラ出してても、汐野だけは俺に毎日挨拶してくるじゃん?」
「もしかして、うざかった?」
「いや、誰かを思いやることが自然にできるんだよ、汐野は。みんながみんな、そうじゃない」
私のことを、そんなふうに見てくれていた人がいたんだ。
なんだかうれしかった。
「だから、汐野に相棒お願いしようと思った」
平凡な私だけど、
そんな私を相棒に選んでくれた伊原くんのために、なにか手伝いたい。
そう思った。
「伊原くんと一緒に、事故の真相を調べるよ」
私は両手で伊原くんの手をとり、ぎゅっと力をこめた。