嫌われ者の小鳥遊さんは、好かれることに慣れてない
それから私は、一層周囲との関わりを遮断した。たった一度の私の気まぐれが、他の誰かを傷付けた。



そして、周囲からの阻害に加え倉科さんという特定の人間からの敵意を向けられることとなった私は、高校生活を開始しても、友達が出来るどころか今までと何ら変わりない孤立した生活を送っているというわけだ。




倉科さんを目の当たりにしたことで、そんな忌まわしい過去の記憶が私の中で鮮明になった。

他の女子達とこの場にいるという事は、倉科さんも宇津井先輩信者の一人なのか。はたまた、私を呼び出すと知ったから来たのか。その真意は分からないが、目の前の倉科さんはあの時から何一つ変わらず、私を嫌っている事は確かだった。




「小鳥遊さん、宇津井先輩が好きなの?だから宇津井先輩にちょっかい掛けてるの?それとも、私の時みたいにただの気まぐれ?」

相変わらず私を睨み付け、蔑むように微笑む倉科さん。彼女にここまでの態度を取られなければならない私は、一体何なのだろうか。




「…倉科さん」

「小鳥遊さんは、誰からも好かれないよ。澄ました態度で馬鹿にして、綺麗な顔してる自分は周りと違うと思ってるんでしょ?私の事長いものに巻かれてる憐れな奴だと思ってるんでしょ!?」

「…思ってない」

「…嘘吐き」

吐き捨てるように倉科さんが呟いたと思ったら、他の女子達が一斉に私に詰め寄ってきた。



ーアンタ、何様?

ー気取ってんじゃないわよ

ー宇津井先輩だって迷惑なだけなんだから



様々な台詞を吐かれても、しっかりと耳には入って来ない。只々、この状況を受け入れる私が居る。

勿論、こんな事で責められる謂れは一ミリも無いので反論すれば良いだけの事。でも、心の何処かで宇津井先輩を利用している気持ちがないとは言えない。


本当は一人が嫌いな私は、もしかしたら誰でも良いから側にいて欲しかったのかもしれない。


ーー宇津井先輩で無くとも、良いのかも知れない。





黙り込む私の方に誰かが掴みかかろうとして、



「そこまでだ」

という無機質な声が女子の群れの向こうから聞こえてきた。
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