嫌われ者の小鳥遊さんは、好かれることに慣れてない
ーー

「…何で、付いてくるんですか」

「本屋へ行くんだろう。俺も丁度購入予定の書籍があるんだ」

「一緒じゃなくても、良いでしょう」

「君は何を言っているんだ、俺達は付き合っているんだから、行動を共にするのは当たり前のことだろう」

至極正論、とでも言いたげに自信たっぷりの宇津井先輩に、私は今日も今日とて盛大なため息を漏らした。






ーーあれから、私達は付き合うことになった。宇津井先輩を心から好きかと聞かれると、正直に言って自信はない。それは、私が今まで誰かを好きになるという事がなかった所為もあるのかもしれない。

どういう感情が好きということなのか、私は確信が持てなかった。



それを宇津井先輩に伝えると、

「俺に嫌悪を感じないのであれば、それで良い」

と相変わらずのポーカフェイスでそう口にした。

という訳で、一応付き合ってはいるが本当の恋人同士かと言えば微妙なところでもある。



「ところで、あれから何も無いか」

「はい、特にいつもと変わりありません」



宇津井先輩信者である女子生徒達に呼び出されたあれ以降、再び私が呼び出されることはなかった。


相変わらず私の周囲には宇津井先輩以外は近寄って来なかったが、あの様にあからさまに敵対視されることもなくなった。



大方宇津井先輩が何らかの策を講じたのだろうと、先輩に直接聞いても涼しい顔をしてはぐらかされるだけ。


だから私もそれ以上は聞かなかったけれど、彼が私の為に動いてくれた事は確かだろう。




好きという感情云々の前に、あれ以降私は宇津井先輩に絶大な信頼を置く様になった。もちろん、彼にそのことを伝える事はしないけれど。


前以上に辛辣な言葉を宇津井先輩に向ける様になったのも、言うなれば信頼の裏返し。


…我ながら、何とも捻くれた思考ではあるが。
< 14 / 15 >

この作品をシェア

pagetop