嫌われ者の小鳥遊さんは、好かれることに慣れてない
「別に、私は宇津井先輩に近付いたりしていません」

「先輩と一緒に第二図書室から出てくるところ、見た子がいるんだから!」

「何でも自分が一番じゃないと気が済まないんでしょっ」

「そうやって私達のことバカにして!宇津井先輩だって利用する為だけに近付いただけのくせに!」

飄々とした私の態度が気に入らないようで、益々ヒートアップしていく女子生徒達。止め処なく浴びせられる誹謗や中傷を黙って聞いていたけれど、




「嫌われ者の癖に誰かに好かれようなんて、良くそんなこと思えるよね。だから嫌われるんだよ」

そう、言われ誰かが口にして元々冷えている心が更に冷え切っていくのを感じた。



目の前がセピア色に見えるような、頭がボーっとするような、良く分からない感覚に苛まれる。







ーー嫌われ者の癖に、誰かに好かれようなんてーー





そう、私は生きているだけで既に嫌われている。



それからは、何を言われても一向に反応しない私。そんな私の耳に、「…変わってないね、小鳥遊さん」と言う聞き覚えのある声が聞こえて思わずそちらに顔を向けた。




「…小鳥遊さんって、いつもそうだよね?」

そう続けるのは、同じクラスの倉科さんだった。彼女もこの場に居たことを、その時初めて認識する。




「私にも、そうやって偉そうにしてきたよね。如何にも自分は良いことしてます、って感じで偽善者ぶって。何考えてるか良くわかんない冷たい性格の癖に、私に同情して」

私に蔑むような視線を向けながら、倉科さんは嫌悪感を隠すことなく続ける。




「小鳥遊さんが中途半端に私を庇った所為で、私は周りからもっと蔑んだ目で見られた。アンタが余計なことした所為で…っ」

鬼の形相とは正にこのこと、心底憎らしそうな顔の倉科さん。私には、何故こんなにも彼女が憎悪に満ちているのか心当たりがあった。
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