嫌われ者の小鳥遊さんは、好かれることに慣れてない
ーー入学してすぐの頃、クラスで委員を決める時間があり、その時倉科さんは一部の女子達からクラス委員長に推薦された。元々目立つのが得意ではなさそうな彼女、曖昧な笑みを浮かべて明らかに困惑している様子だった。



この委員決めの前の休憩時間、私の隣の席に座る女子とその他数名が倉科さんをクラス委員長に推薦する算段を立てているのを、偶然耳にした私。



いつもは女子のそういった揉め事に何の興味もない私だが、何故だかその時は倉科さんを助けたいという気持ちに駆られた。

きっと、中学校でも敬遠されていた私はこれから始まる高校生活に幾らかの希望を抱いていたのだろう。もしかしたら倉科さんと友達関係になれるかも、そんな目論見もあったのかもしれない。



倉科さんがクラス委員長に承認される前に、彼女達が事前に話していたことをその場で伝え倉科さんの選出を取り下げるよう進言した。



そんな私の身勝手で愚かな行為が、更に倉科さんを陥れることになるなんて露にも思わなかった。



その結果倉科さんがクラス委員長に選ばれる事はなかったが、この件が彼女にプラスに働いた様子はなかった。


寧ろ、今までよりも更に表情に影を落として辛そうな彼女の姿。



そんな彼女に私は声を掛けるも、彼女はただ小さく「関わらないで」と呟いただけだった。

それきり声をかけることも躊躇われ、当然倉科さんと親しくなることもなくこの件は幕を閉じた。




それから暫くして、倉科さんに辛く当たっていた私の隣りの席の女子と行動を共にするようになった倉科さん。

同時期に、私はクラス中の女子から辛辣な態度を取られるようになる。



幾らそう言ったことに無頓着な私でも、それがどういうことを意味するのか大体の見当は付いた。




私は、倉科さんから友達の対象としては選ばれなかったということ。

スクールカーストだのクラス内序列などと言われているこの狭い世界では、それもまた仕方ないことだと分かる。



頭では分かっていても、軋む心はどうしようもなかった。
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