お兄ちゃん系男子は我慢の限界。
「…何で俺のこと避けてんだよ」
「……別に。避けてないけど」
「はぁ?お前なぁ…こんなにあからさまにしといてそれかよ。こっち向けよ夏海」
だが一向に俺を見ようとはしない夏海に苛立った俺は、夏海の前に回り込んだ。
「こっち向けって」
クイ、と顎を持ち上げると、真っ赤な顔の夏海と目が合った。
僅かに濡れた瞳に、俺の心臓がグラリと揺れる。
「なつ、み…?何で泣きそうなんだよ」
「っ泣きそうじゃないから!」
無理やり顔を背けた夏海がクルリと椅子を回転させて、再び俺に背を向ける。
「っ」
俺は夏海の肩をつかんで、無理やり椅子ごと回転させ、再度夏海の顔を覗き込む。
「言ったろ。俺の前では強がるんじゃねーよ」
「…強がってなんか…」
「あんまり強がってると襲うぞ?」
ピシッと夏海が固まった音が聞こえたような気がした。だが俺は割と本気だ。
「夏海の涙目…そんな潤んだ目で見つめられるとヤバい」
「…ばっ!ばばば、バッカじゃないの!?もう、最近ほんとにどうしちゃったの!?お兄ちゃんじゃないみたい…!」
「これが本当の俺だから。
いつだって夏海に触れたくてドキドキしてる」
こんな俺を見せたら嫌われるんじゃないかと、ずっとあと一歩が踏み出せなかった。
だけどやっぱり、俺は夏海が、好きだから。