うそつきす -嘘をついたらキスをされる呪い-
***
家を出て、待ち合わせ場所の駅前の噴水近くに向かう。
予定よりも早く着きすぎてしまい、あたりを見渡しても伊達の姿はなかった。噴水近くのベンチに腰かけて、伊達がくるのを待つ。
楽しみで昨晩はあまり眠れなかった。布団に入っても頭は冴えていて、目をつぶろうがデートのことばかり考えてしまう。待ち遠しかった今日がやってきて嬉しいのだがそわそわとして落ち着かない。
駅前を通り過ぎていく人たちを眺め、それが伊達と年齢の近い男であれば、その服を伊達に着せる想像をする。カップルが通り過ぎれば、それを伊達と佳乃に置き換えてみたりもした。カップルたちはどちらも幸せそうで、二人の時間を楽しんでいるのだと伝わってくる。
伊達は――どう思っているのだろうか。佳乃は今日を楽しみにしてきた、伊達もそうであればいいと思う。
このデートを言いだしたのは伊達であるし、照れながら『これってデートみたいだね』と言ったのが忘れられない。もしも佳乃のことが好きでなかったら、デートとは言わないだろう。浮かれすぎておかしくなっているのかもしれないが、佳乃はほんの少しだけ期待していた。
もしかすると伊達も佳乃のことが好きなのかもしれない。だとすれば二人は両片思いであって、今日のデートで関係が進展するかもしれない。たとえば伊達に告白されるとか。そこまでを想像して佳乃は手で顔を覆った。これが家だったらクッションを抱きしめて床を転げまわっていただろう。外なのでにやついた顔を隠す程度に留めておく。
そろそろ待ち合わせの時間だろうか。佳乃が時計を確認すると、既に待ち合わせ時刻を過ぎていた。だがあたりを見渡しても伊達はいない。
遅刻もしくは待ち合わせ場所を間違えているだろうか。念のため、伊達に連絡を入れておく。
今日、買い出す理由となった一年生合宿は今月の最終週に行われる行事だ。親睦会ということで一年生徒のみ金曜の夜から土曜にかけて学校で一泊することになっている。佳乃も去年体験したが、生徒会役員による劇やかくし芸などの出し物があり、とても楽しい行事だった。
本来ならば二、三年生は参加しないのだが、生徒会役員やその手伝いをする生徒は別である。伊達は今年は生徒会側としてこの行事に参加するのだろう。
伊達が演劇をするとしたら――と想像して時間を潰していたが、やはり伊達はこない。待ち続けて三十分が経過しずっと外にいるのだ、五月の風が少しずつ体を冷やしていく。
ベンチからは駅前のコーヒーショップが見えていた。伊達と合流できたらまずは温かいものが飲みたい。寒さにかじかんだ鼻をすすりながら、温かいコーヒーがあるのだろう店を羨ましげに見つめる佳乃だった。
家を出て、待ち合わせ場所の駅前の噴水近くに向かう。
予定よりも早く着きすぎてしまい、あたりを見渡しても伊達の姿はなかった。噴水近くのベンチに腰かけて、伊達がくるのを待つ。
楽しみで昨晩はあまり眠れなかった。布団に入っても頭は冴えていて、目をつぶろうがデートのことばかり考えてしまう。待ち遠しかった今日がやってきて嬉しいのだがそわそわとして落ち着かない。
駅前を通り過ぎていく人たちを眺め、それが伊達と年齢の近い男であれば、その服を伊達に着せる想像をする。カップルが通り過ぎれば、それを伊達と佳乃に置き換えてみたりもした。カップルたちはどちらも幸せそうで、二人の時間を楽しんでいるのだと伝わってくる。
伊達は――どう思っているのだろうか。佳乃は今日を楽しみにしてきた、伊達もそうであればいいと思う。
このデートを言いだしたのは伊達であるし、照れながら『これってデートみたいだね』と言ったのが忘れられない。もしも佳乃のことが好きでなかったら、デートとは言わないだろう。浮かれすぎておかしくなっているのかもしれないが、佳乃はほんの少しだけ期待していた。
もしかすると伊達も佳乃のことが好きなのかもしれない。だとすれば二人は両片思いであって、今日のデートで関係が進展するかもしれない。たとえば伊達に告白されるとか。そこまでを想像して佳乃は手で顔を覆った。これが家だったらクッションを抱きしめて床を転げまわっていただろう。外なのでにやついた顔を隠す程度に留めておく。
そろそろ待ち合わせの時間だろうか。佳乃が時計を確認すると、既に待ち合わせ時刻を過ぎていた。だがあたりを見渡しても伊達はいない。
遅刻もしくは待ち合わせ場所を間違えているだろうか。念のため、伊達に連絡を入れておく。
今日、買い出す理由となった一年生合宿は今月の最終週に行われる行事だ。親睦会ということで一年生徒のみ金曜の夜から土曜にかけて学校で一泊することになっている。佳乃も去年体験したが、生徒会役員による劇やかくし芸などの出し物があり、とても楽しい行事だった。
本来ならば二、三年生は参加しないのだが、生徒会役員やその手伝いをする生徒は別である。伊達は今年は生徒会側としてこの行事に参加するのだろう。
伊達が演劇をするとしたら――と想像して時間を潰していたが、やはり伊達はこない。待ち続けて三十分が経過しずっと外にいるのだ、五月の風が少しずつ体を冷やしていく。
ベンチからは駅前のコーヒーショップが見えていた。伊達と合流できたらまずは温かいものが飲みたい。寒さにかじかんだ鼻をすすりながら、温かいコーヒーがあるのだろう店を羨ましげに見つめる佳乃だった。