I Still Love You
「はい、私が高校一年の時、彼は何も言わず、アメリカに行ったんです」

「何も言わずに?ずっと一緒にいたのに?」
さすがの崎本も驚いたように、言葉を発した。

「そうです、何も言わずに。引越しの準備も何もかも私に悟られることなく、私の両親も巻き込んで私にだけ何も言わずに行きました」

そう、あの頃「なぜ教えてくれなかったの」と母親に詰め寄った時も、曖昧な返事しかなく両親さえ恨んだ記憶がよみがえる。

もちろん、今は壮一が口止めをしていたこともわかっているし、両親を責める気持ちもない。
その苛立ちや、悲しみ、憎しみはひたすら壮一へと向いて行った。

日葵の言葉をただ崎本は黙って聞いていた。

「そして、急に8年ぶりに日本に戻ってきて、私の上司になったんです」
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