I Still Love You
「なんだよその顔は。もう長谷川は立派な大人だってわかったよ」
踵を返した後に言った壮一の表情は、もう日葵には見えなかった。
(何を言うつもり?何を聞きたいの?)
自問自答したまま、壮一の後姿を見ていた日葵だったが、不意に壮一が振り返り動きを止めた。
「日葵……ごめんな」
今度ははっきりとしたその謝罪に、日葵は呆然としていた。
そんな日葵に構うことなく、ドアは音もなく閉まった。
静まり返った部屋で、日葵はようやく大きなため息を吐いた。
(今更何に謝ったのよ……)
前に進もうと思うのに、いつもこうして心を乱される。
「もう嫌……」
壮一に対してなのか、自分に対してなのかわからないその言葉が無意識に溢れ落ちた。