I Still Love You
「私、何も知らなかったんだなって」
「彼のことを?」
少しだけ驚いた表情を見せた崎本に、日葵は小さく頷いた。
「生まれたときから一緒にいて、ずっと見ていたはずなのに、今いる主任は別の人のようで」
壮一にべったりくっついていた時は、ただ一緒にいて楽しかった、嬉しかった、完ぺきな人だと思っていた。
しかし、今は壮一の厳しさや、優しさ、そして壮一自身の葛藤。
それを親や自分に見せないように、どれだけの努力をしてきたのかを知ってしまった。
努力なしでなんでも完璧に出来ると思っていた自分は、どれだけ子供だったか。
「別人か」
「別人ってそう言うわけでもないんですけどなんて言うか」
考えて言い淀む日葵に、崎本はジッと日葵を見つめた。
「生身の男?」
「え?」
その言葉の意味が解らず言葉を発した。