I Still Love You

なんとなく落ち着かない気持ちで食事を終え、送るといってくれた崎本の車の中。
信号が黄色に変わり、ゆっくりと停車すると静かな車内で崎本の声が響いた。
「また今度……」
しかし崎本の言葉は、日葵のカバンの中から鳴った着信音に遮られた。

ディスプレイの表示は〝清水チーフ"。
そっと崎本を見ると、小さく息を吐いて「出て」と言葉を発した。

仕事以外の要件で電話があるはずがないと、日葵はゆっくりと通話ボタンを押す。

『お疲れ様。遅い時間に悪い』
少し疲れた壮一の言葉に、日葵も「お疲れ様です」と返した。

『今いい?』
いいかと聞かれれば、かなり微妙な空間だったが、そんなことも言えず日葵は「はい」と返事をした。

『明日からの名古屋なんだが』
「はい、柚希ちゃんが行く予定の?」
冷静に言葉を発することが出来ただろうか?そんなことを思いながら日葵は壮一の言葉の続きを待った。

『行ってくれないか?』
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