I Still Love You
「すみません」
かなり自分の世界に入り込んでいた日葵は、ハッとして崎本を見た。
ハンドルをギュッと握りしめて、俯いていて崎本の表情は解り知れない。
「ありがとうございました」
なぜか重たい空気に、日葵は慌ててシートベルトを外すとドアノブに手をかける。
それと同時に後ろから腕を引き寄せられた。
ハッとして振り返ると、日葵は崎本の腕の中だった。
「え? 部長?」
その状況が理解できず日葵は戸惑いの声を上げた。
「行くな……って付き合ってても言えないけど、行って欲しくないな」
「あ……え……っと」
日葵は崎本の腕の中が落ち着かないことと、どう返事すべきかわからず言葉を止めた。
戸惑う日葵をよそに、じっと崎本に見つめられる。
そっと頬に手が触れ、顎を掬い上げられたところで、日葵は反射的に崎本の胸をおしていた。
「あの……」
「悪い」
そっと日葵から離れると、崎本は大きくため息を付いた。
「本当にごめん。もう行って」
日葵を見ることなく言われたその言葉に、ギュッと唇を噛むと日葵は言葉を発した。
「ありがとうございました」
それ以上何か言えるわけもなく、日葵は車を後にした。