I Still Love You
チラリと壮一を伺えば、表情を変えることなく日葵をみていた。

「そんな訳に行かないだろ? 急に柚希の代わりに無理を言って行ってもらうんだから」
その言葉に日葵の心の中はザワザワと音を立てる。
本当は柚希と行きたかったのではないか? 自分とはいきたくないのではないか。
そんな子供のようなことを思ってしまった自分が情けなくなる。

グッと唇を噛んだ日葵に、壮一は静かに声を発した。

「じゃあ乗ってくれ。頼む」
私情をいれているのは自分だとは日葵もわかっていた。でも駅までなら電車でも変わらない。その気持ちも譲れなかった。

このざわつく気持ちで壮一と同じ空間にいたくなかった。

「でも、電車でもさほど変わりませんし」
その言葉に、壮一は視線を外すと大きなため息を吐いて呟いた。
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