I Still Love You
誕生日パーティーも楽しい雰囲気で過ぎていった。
日葵はさっきつないだ手のぬくもりがまだ残っている気がして、テーブルの下でギュッと手を握りしめた。

「日葵ちゃん?日葵?聞いてる?」
香織ママの言葉に、我に返ると日葵はみんなをみた。

「え?なに?」

「たまには壮一のピアノ聞きたいわよね?」


そうちゃんのピアノ?
昔はよく引いてくれていたそうちゃんのピアノを、もうしばらく聞いていない気がして、日葵はチラリと壮一を見た。

「いいじゃないか?壮一。今日は母さんに誕生日だぞ?」
父弘樹の言葉に、壮一は顔を歪めた。


「日葵ちゃんからも言ってやって?聞きたいって」

「え……でも……」
渋った私に、壮一はイジワルそうに言葉を発した。

「日葵が躍るなら」

「はあ?」

(いつの話よ?)


昔はこの広いリビングの真ん中で、壮一のピアノをバックに楽しくお遊戯のような踊りをして、みんなが笑顔だった。

「私が踊れるわけないでしょ」
イラっとして言った日葵に、壮一は試すようにクスリと笑った。

「昔みたいにお遊戯会の「くまのおうち」でも弾こうか?」

「壮一!日葵ちゃんに絡まないの!」
香織の言葉に、壮一は少しため息をつくと、無言でピアノへと歩いて行った。


軽やかな音がリビングに響く。

アレンジされているが、「happy Birthday」だ。
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