I Still Love You
「コーヒーでも飲もうか」
壮一の言葉にも日葵はそのままジッと止まったまま動けなかった。
「だって……私があんなに無邪気に付きまとったから無理せざるえなかったんでしょ。私がそうちゃんを苦しめた……」
そこまで言ったところで、ギュッと日葵は隣から伸びた腕の中に囲われる。
「違う、俺が日葵の前で完璧でいたかったんだ。いつでも頼れてかっこよくて。自慢の……家族でいたかったんだよ。中身が伴っていなかったのに」
そこまで言われたところで、とうとう日葵の瞳から涙が零れ落ちる。
「でもあの時は、そこまでなにも考えてなかった。ただ逃げたんだよ。18の俺は。そして帰ってきても、大人になっていた日葵に動揺して、また心にもないことばかり言った。それをずっと謝りたかった」
日葵は抱きしめられたまま、壮一の言葉を聞いていた。
あの頃はお互いが幼さ過ぎたのだろう。
お互いのことを思いやることも、知ることもなく、ずっと近くにいたのに何も知らなかったのかもしれない。
「もう謝らないで。許すから」
小さく日葵はそう言うと、そっと涙を拭った。
それ以上、これからのことをどう言っていいかはわからなかったが、これで少しは前に勧める気がした。
「ありがとう」
心底ほっとした壮一の声に、日葵は顔を上げた。