I Still Love You

「嬉しい。壮一めっきり最近弾いてくれないから」
香織の言葉に、莉乃も頷いた。

「壮一君、本当に上手よね」
そんな声を聴きながら、日葵はきれいで美しい壮一をぼんやりと見ていた。



『お坊ちゃんはやっぱりピアノが弾けるんだな』
中等部の時にひがみで上級生に言われた言葉を気にしているのではと、日葵は思っていた。

(やっぱり弾いているそうちゃんは……)

なんだというのだろう?そんな事を思いながら壮一を見ていると、弾いている壮一と視線が交わる。

ジッと見つめられて、日葵も視線を外せずにいた。


いつの間にか曲が変わっていた。

(なんて曲だろ……)
甘くて、切ないそんなメロディだった。

その曲が日葵の心をギュッと締め付けた。


この夏の日が、忘れられない夏になるとは、日葵はまだ知らなかった。


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