I Still Love You
え? 唇が本当に触れそうな距離まで壮一が近づき、日葵は動けなくなる。
初めて見るかもしれない。熱を持ったような壮一に、この人は誰?そんな気さえする。
しかしそんな日葵に気づいたのか、壮一はハッとしたように動きを止めた。
「悪い」
何に対して謝られたのか全く分からない。
今ままでとは確実に違う、二人の距離感を意識しないわけにはいかなかった。
破裂してしまうのではないかと思うほど、心臓が煩く音を立てる。
何……今の。
日葵の中で『生身の男』と言った崎本の言葉が不意に頭をよぎる。
冷たいぐらいだった身体が一気に熱を持つのがわかった。
どうしていいかわからない日葵を他所に、壮一を見れば涼しい顔をして文字を直している。
「日葵、ここだろ?」
至って普通の壮一に、日葵は唖然としつつ、自分だけ動揺しているようでそれを隠したくて、表情を引き締めた。
「そう。そこ。直したらご飯だから片付けてね。お茶持ってくる」
自分に対しての言い訳のように、日葵は言うとキッチンへと急いだ。