I Still Love You
デスクに戻り、すぐに受話器を取ると電話を入れる。確認事項を終え、ボールペンを走らせていると、柚希が壮一のところへ書類を持っていく前に、日葵のデスクの横で止まった。
「チーフ、相変わらずすごい仕事量ですね」
「そうね」
事実を答えることしかできず、日葵は曖昧に返事をすると柚希に視線を向ける。
考えないようにしていたが、柚希が壮一を思っていることを思い出す。
「長谷川さん、名古屋で……」
「え?」
名古屋その言葉に、日葵はビクッとして声が大きくなってしまった気がした。
「いえ、なんでもないです。名古屋の件はご迷惑をかけてすみません。謝罪が遅くなっちゃいましたが」
きっと聞きたいことはそれではないだろう、日葵は確信しつつも小さく首を振る。
「私こそ、柚希ちゃんが大変なのに気づかなくてごめんね」
「そんな」
柚希はまだ何か思案する表情をしていたが、少し微笑んだ。
「チーフに渡してきます」
それだけを言うと、柚希は歩いて行ってしまった。