I Still Love You
どうすることもできず、ただリビングの入り口に立ち、壮一を目にしていた。

見ているというのも、睨むとも違う、ただそれが目に入っているだけ。まるで絵をみるような気分だった。

それほど、壮一がそこにいることが信じることができなかった。

そんな日葵のことなど構うことなく、壮一はキョロキョロと部屋を見回した。
「ひま、いい匂いする。なに?」
昔より低く響くその声に、日葵は反応できずにいた。
そんな日葵に、壮一は小さくため息を吐くと立ち上がり日葵へと距離を詰める。

「日葵?まだ調子悪いのか?」

(なんて的外れな事を言うのだろう?)

そんな事を思いながらも、ようやく日葵は壮一を睨みつけた。

「そう思うなら帰ってよ」
呟くように出た言葉に、壮一はフッと微笑を浮かべると日葵の横を通り過ぎる。
そして勝手にキッチンへと向かい、鍋の蓋を開けるのを日葵は目で追っていた。

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