I Still Love You
「きゃ!」
急いで歩こうとして、バランスを崩した日葵の目に、慌てた壮一が目に入る。
「悪い」
不意に暗くなった視界の上から聞こえた声に、日葵は息を飲んだ。
転ぶことはなく、抱きしめられるように支えられた上に、聞こえた謝罪の言葉。
「いえ、私こそ……」
慌てて体制を整えると、日葵は壮一から離れた。
それから壮一の歩くスピードが遅くなったことに、日葵は驚いて隣の人をチラリと盗み見た。
「なに?」
昔より男っぽくなったその顔は、不機嫌そうなものではなく日葵はホッとした。
「いえ、昔なら早くしろっていわれてばかりだったから驚いて……」
つい発してしまった自分の言葉に、日葵は後悔するも、その言葉に対する壮一の返事はなく、少し複雑な表情を浮かべた気がした。
「乗って」
目の前に現れた、白のドイツ車に日葵は躊躇しつつも乗り込む。
正直頭痛も相変わらずだったし、雨も本降りになっており、送ってもらえるのはありがたかった。
すっぽりと包み込まれるような、座席に日葵は安堵の息を吐いた。