I Still Love You
(あっ、満月……)
吸い寄せられるようにベランダへと出て、空を見上げた。
真っ黒な空の中に輝く真ん丸の月が日葵を見下ろしていた。
ポロポロと涙を拭うことなくそんな月を見ていると、突如カタンという音がして日葵はハッとその方向に目を向けた。
「こっち来て」
静かに聞こえた薄い防災壁の向こうから聞こえた壮一の声。
その内容に日葵は言葉を発することもできず、目を見開いた。
「長谷川、こっちこい」
長谷川と呼ばれると抵抗できない日葵は、「ずるい」そう思いつつも一歩一歩二人を隔てる壁へと足を踏み出した。
壮一の姿が見えない事で、近づくことができる。