I Still Love You
「気合を入れたくて……」
「バカだな……日葵は……本当に。バカだよ」
言葉は悪いのに、なぜか悲し気に聞こえる壮一の声に、日葵も何も言えずただ涙を流していた。
そっと、頬から手が下ろされ、手すりに置いていた日葵の手の指に壮一の指が触れる。
ピクリと揺れた日葵の手を、壮一の手がギュッと握りしめた。
もう壮一の顔は見えず、隔てる壁で触れているのは一部で、はっきりと顔すら見えない壮一との距離。
自分が今どうしたいのかわからず、ただ無言でその温もりだけを感じていた。
「長谷川、明日からまた頼むな」
その言葉に日葵が小さく返事を返すと、手のぬくもりは消え、壮一が中へ入るのが分かった。
キュッと今まで壮一が触れていたところを、自分の手で包むと日葵も家へと入った。