スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】
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病院ではMRIを受けた。頭を強く打っていた事と、私が階段から落ちた時のことをほとんど話せなかったことから1泊入院して、翌日の昼前に退院した。
私の頭の中では、ずっと2日間の出来事がグルグルと回り続けて、永遠に終わらないような気がして。なにが悲しいのか判らないのに、涙がずっと止まらなかった。
両親にも、瀧先生にも何があったか聞かれたけれど、何をどう話したらいいのかわからなくて、何も話せなかった。あんな複雑な桜庭くんの事情を私が勝手に話していいはずがない。誰にも、何も話せない。
夜、私のスマホが着信を告げた。
膝を抱えてベッドに座っていたわたしは、鳴り止まない電話にようやく手を伸ばす。
画面に表示されている、桜庭くんの名前に、私の心臓は大きく脈打った。
画面に表示されている受話器のマークを、ドクンドクン脈打つ心臓を抑えて、ゆっくりスワイプした。
「……とわ?」
耳を押し当てた受話器越しに、桜庭くんの声がした。その声は、掠れて、悲しそうで、今にも泣きだしそうに聞こえた。
「……桜庭くん」
訪れた沈黙は、私と桜庭くんの間に静かに冷たく横たわる。それはどこまでも深くて、暗い淵のように感じられた。