スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】

「とわ、身体大丈夫? 痛い所ない? 後から、痛んだりするから、何かあったらすぐ病院行ってね」

 ……身体は大丈夫だったけれど、心がヒリヒリと痛む。だけど、心のどこが痛いのかも、どうしたら治るのかも、全く見当がつかない。

「ごめんね。俺……とわに、会いに行けない。とわ、俺……会えない……。約束してたのに、ごめん。ごめんね」

 会えない。

 その言葉は、確かに私の心を、冷たい淵に突き落とした。

 暗くて深い淵の中は、昨日の出来事がまだ全然消化出来ていなくてぐちゃぐちゃで……。友香さんの言葉が、いつまでも減衰すること無く反響していて、桜庭くんの声すら、聞こえなくなる。

 桜庭くんが「ごめん」と謝るのも、何に謝っているのかも判らないし、自分が何故こんなにも絶望的な気持ちで、なぜ悲しいのか、判らなくなる。

 私はどうしてこんなに悲しいの?

 変な動画が投稿されたから? その動画についていろいろ言われていたから? 書がボロボロにされたから? 友香さんが……全て判っていた上で、私に嫌がらせをしていたから? 階段から、落とされたから? それとも……桜庭くんが今、私の傍に居ないから?

「……とわ? 聞こえてる?」

「……聞こえ、てる。 大丈夫だよ」

 大丈夫。平気。ちゃんと、聞こえてる。呪文のように、私は答える。

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