スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】

「ほら、大したことないでしょ?」

 今……私……、キスされた?

 そこに思い至るや否や、私は、桜庭くんの胸の辺りを手で押しのけて、2年生の教室とは反対側、つまり、1年生の教室のある1階へ走って逃げた。

 1階の昇降口付近で、私は、後ろから足音が聞こえないのを確かめて足を止めた。心臓がものすごい勢いで脈打っていて、胸を抑えてしゃがみ込んだ。

 キス、された。

 私は、手の甲で口元を擦る。

『大したことないでしょ?』

 桜庭くんの声が甦って、私はさらに口元をゴシゴシと擦った。

 大したことなくない。全然大したことなくない!

 初めてだったのに。

 好きな人と、したかったのに……!!

 しばらくしてから、私は誰も居なくなっていた教室に戻って、鞄を持って急いで帰った。

 あんなにショックだった若菜と武田のキスの事は、自分の予想外のファーストキスのせいで、すっかり頭から抜け落ちてしまっていた。
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